第18章 本当に哀れな人

「彼女をレストランに一人で置き去りにして、あやうく事故になるとこだったのよ! 目が不自由な方だってわかってるんでしょう!?」

「あんたねえ! 奥さんの目を盗んで……」

女性客はその言葉を口にするのも汚らわしいといった様子で、嫌悪感を露わにして井上颯人を睨みつけた。

「ほんと、最低のクソ野郎だわ!」

井上颯人は、これまでの人生で赤の他人から指を差されて罵倒されたことなど一度もなかった。

端正な顔が瞬時に醜く歪み、瞳の奥に羞恥と怒りが駆け巡る。

だが衆人環視の中だ、理性が辛うじて働いた。弁解の言葉を探そうと口を開きかけたその時、横にいた山田悠子が先に噛みついた。

彼女は敵意を剥き出...

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